責任についての認識の違い
ベトナム人と仕事をする日本人の間では、「ベトナム人は責任感がない」や「ベトナム人は謝らない」といった話がよくあがります。サービス業でも何か落ち度があったときに謝罪がなくて業を煮やす日本人も珍しくありません。実際日本で働く技能実習生の事前教育でも「仕事に対する責任をもつこと」や「悪いことをしたときはきちんと謝る」、「言い訳をしない」といったことを口酸っぱく教育していますが、中々この意図が伝わらないという現場の声も聞かれます。
と、これで完結してしまうと話が終わってしまいますので今回は2回に分けてこの点を掘り下げます。
では日頃の生活の中で、ベトナム人は全く謝らないのかというとそういうわけではありません。まず日本人の感覚との違いとして「責任を背負う範囲が狭い」ということが考えられます。
以下の例を参考に見てみましう。
例①:小売店で買い物をした場合
品切れの商品を取り寄せたときに1週間かかると言われたので、1週間後に取りに行くと商品はまだないとのこと。ベトナムではよくあることですが、店員からの謝罪はありません。ここが日本なら客は謝罪がないことに怒るところですが、ここにベトナム人と日本人の根本的な感覚の違いがあります。
店員「自分は納品業者に確認して1週間と言われたからそう言っただけ。1週間で納品しない納品業者が悪いので自分は謝る必要がない。」
日本人客「納品業者云々は店側内部の問題。店頭で客にそう案内をして結果的に迷惑をかけているわけだから納品業者の分も代表して謝罪すべき。」
この両者の主張のやり取りでは議論が平行線になってしまいます。
例②:部下が失態を犯した場合
日本人に多い「責任者出せ!」フレーズですが、ベトナムでこれをやると肩透かしに遭う可能性が高いです。以下は私の知り合いがビジネス上でベトナムローカル企業にクレームを出した例です。
仕事の打ち合わせをベトナム企業の上役と行い、当日の進行はその部下が行うという段取りでした。しかしその部下が打ち合わせした内容を理解しておらず当日のビジネスに支障をきたしたとのことです。それに対してこの日本人は上役の人にクレームを入れたわけですが、その場での謝罪はなく部下にはきちんと伝えたと言うのみ。上役からの謝罪がないことに釈然としなかったとのことです。
日本人がベトナム人に対して責任感がないという場合でも、彼らの中では自分が負っている責任は果たしていると思っている場合が多々あります。店員などにその認識の根本的な違いを理解させるのは難しいですが、自社のスタッフなどでその部分を叱責、または教育する場合は上記の感覚の違いからしっかり説明する必要があるでしょう。ただ単に責任感がないと頭ごなしに叱るだけでは思わぬ反発を生む恐れがあるのでご注意下さい。
次回は「何に対して謝罪をするのか」を紹介します。