ベトナム人の給与交渉について思うこと

物価の上昇率が高いベトナムでは毎年その上昇率分以上の給与アップがない場合、労働意欲の低下につながると言われています。ですので毎年給与の見直しというのが必然的に求められるわけですが、日本のように決まった時期に必ず給与を見直しているにも関わらず、ベトナム人からの給与交渉に頭を悩ませる管理職の人も珍しくありません。本日は私自身の体験を交えながらベトナム人の給与交渉に関する意識を紹介していきます。

 

まず一般的なベトナム人の感覚では入社日から1年後に給与の見直しがあるというのは今いちピンときにくいようです。これはベトナムローカル企業での給与査定と日系企業の給与査定に違いがあるところに起因します。

日系企業における給与の変動は特に説明する必要がないと思いますので割愛しますが、ベトナムのローカル企業では1年を待たずに昇給させるケースも珍しくありません。

 

というのもローカル企業では、雇い初めはその社員のスキルなどを正確に判断できないので低めに給与を設定し、数か月後に働きぶりを判断してから正確に決定するという企業もあります。←これは試用期間とは似て非なるものです。

具体的な例で説明しますと、

ある人(Aさんとします)が新しい会社に転職した際に、始めの3か月を300USDで雇われたとします。そしてその3か月終了後にいいパフォーマンスを残したので給与がそこから400USDになることもあるわけです。これが何か明確な数値で示せるのであればいいのですが、自称良いパフォーマンスを出している社員も多いのが大変なところです(笑)

 

それでこのシステムを当然と思い、日系企業に就職されると少し厄介なことになります。つまり内定時に提示された給与はあくまで様子見のための給与で、実際の能力の査定後に更に高い給与が数か月後に見込めると思い込んでいる可能性があるけです。

私もベトナム人の求職者とよく面談をした際に紹介企業の説明をするのですが、その際に

 

「3か月後ぐらいに働きが良ければどのくらい給与が上がりますか?」

 

という質問を受けることがあります。日系企業での就業経験がない人ほどこの質問が出やすいのですが、ここで日本の給与システムに関して懇切丁寧に教えておかないと後々のトラブルに発展する可能性があるわけです。よく日本へ行った実習生に関する企業側のクレームで、

 

「まだ半年も働いていないくせに、すぐ給与を上げろと言ってくる!」

 

といったものがあります。これも上記のベトナムの企業文化をそのまま日系に持ち込んで発生する典型的なトラブルと言えるでしょう。かく言う私もかつてベトナムのローカル企業で管理職をしていたので、部下からの給与交渉には幾度なく向き合ってきました。

 

「なんでこのタイミングで…?」

 

と最初は面食らったものですが、こういった事情を理解してからは双方納得いく形で入社前から入社後までの処理の仕方を身に付けたものです。逆に私自身が、

 

「だからなんでこのタイミングで…???」

 

というところで当時の社長から給与のアップを打診されたこともあります。給与の見直し時期が個人によってバラバラだと自ずと不公平感が生まれやすいでしょうから、できればそれは避けたいと考えるのは日系的な考えでしょうか。お互いの給与がオープンなベトナム社会では誰の給与が上がったとかいう情報もツーカーです。

 

「何で自分の給与は変わらないのに、アイツだけ!!」

 

というやっかみはローカル企業では日常茶飯事です。

日系企業での就業経験者は「給与はとりあえず1年経つまで変わらないものだ」という感覚を持っていますが、その感覚を受け入れることができない人は日系企業から離れていく傾向があるようです。

 

 

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