不良な送り出し機関で働くと…

ベトナム人の求職者と面談をしていますと技能実習生の送り出し機関や日本側での実習生管理団体で働いた経験のある人によく出会います。弊社に面談に来るほとんどの人は日系企業での就業機会を求めて相談にいらっしゃるのですが、よくこんな話を打ち明けられます。

 

「もう実習生関係の仕事には就きたくない」

 

この言葉の裏には一体どんな事情があるのでしょうか。送り出し機関に関しては色々と悪いうわさがありますが、優良な送り出し機関と不良な送り出し機関で働くのでは実習生のみならず、スタッフにも色々な影響があるようです。今回は送り出し機関で働いた経験のあるベトナム人、また日本の管理団体で働いたベトナム人の意見を2回に分けて紹介します。(本記事は各方面より集めた証言及び筆者自身の体験をもとに書いています。)

 

技能実習生制度の内容については割愛させていただきます。以下にURLを載せておりますのでご存じでない方は参考にしてください。 https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/index.html 『外国人技能実習制度とは』

 

さて、実習生は日本へ行く前に前述の送り出し機関に属して日本へ実習に行く準備をします。ここでのプロセスで冒頭の求職者のような人が悩み、転職を決意するわけです。

 

・Huongさん(仮名)【ビザ申請に関する資料担当】:

「ビザを申請するために日本で就く仕事の関連業務の経験が求められるんですが、ほとんどの人はその経験がありません。ですので経歴には実際には働いていない会社や架空の会社で働いたことにして提出しています。」

 

技術を学ぶという制度なので建前上、その学ぶ上での基礎経験が求められるのは言うまでもありません。しかし実際はそれを遵守していると人は集まらないということでしょうか。ここには日本の人手不足という要素も絡んでいるような気がします。

 

・Duanさん(仮名)【営業部】:

「自分の担当の実習生が日本の劣悪な企業に送り込まれることを知っていました。募集の時点で実際の給与より上乗せして実習生に紹介することもあります。私欲に走れば儲かりますが自分には無理でしたね。」

 

一般に送り出し機関の営業部は担当の実習生が一人日本へ行くごとに1000USD程度のボーナスが支給されます。一つの担当企業で通常3人以上の実習生を送り出すのが普通ですから結構な金額です。そのボーナス欲しさに何とかして実習生を日本へ送り込もうとする営業担当者も多くいます。

 

・Longさん(仮名)【人材募集部】:

「送り出し機関に支払うお金は送り出し機関の利益。私の給料はそれ以外のところから入るお金のほうが多いです」

 

実習生の失踪原因が送り出し機関へ納めるお金の高さと判断した政府は、送り出し機関に収める金額を上限3600USDまでと定めました。それ以上の費用を請求すると受け入れ停止の処置を受けます。しかし実習生はその送り出し機関に入校するために袖の下を渡していますので、支払い総額は表に上がってこない実情があります。

 

・Mさん(日本人、仮名)【縫製会社社長】:

「残業代は350円」

 

これから日本へ行く実習生への説明に来ていた日本企業の社長です。その社長は実習生に「残業代は350円」という説明をしていました。そこで実習生から「何でそんなに安いんですか?」という質問を受けていましたが、何とも理由にならないような御託を並べて煙にまいていました。日本人が自分の説明を聞いているということで何ともバツの悪い顔をしていたのが印象的です。

本来こういった企業とは付き合わないのが、日本の管理団体及び送り出し機関としてあるべき姿なんでしょうが、現状を窺うことができます。

 

 

次回は日本の管理団体で働くベトナム人の意見を紹介します。

 

 

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