ベトナム語の色あれこれ
ベトナム語で色が分かると結構便利なことがあります。色そのものについて談義をする機会はあまりないかもしれませんが、物の名前が分からなくても現物があれば色を言うだけで相手に理解してもらえます。「この赤いやつ」とか「あの白いもの」といった感じですね。日常に出てくる物は数えきれないので、まずは色を言って単語の代用をするというのもありかと思います。
以下はベトナム語の基本的な色です:
Màu(色)+ trắng(白)
đen(黒)
đỏ(赤)
vàng(黄)
xanh(青、緑)
nâu(茶)
ここで気になるのがxanh(青、緑)。ベトナム語では青も緑も一語で表します。例えば「空の色は?」と聞かれればxanhと答えますし、「ベトナムの軍服の色は?」と聞かれてもxanhと答えることもあります。ベトナム人は青色と緑色の区別がつかないのでしょうか。もちろんそんなことはありません。
緑色を厳密に言うときは「màu xanh lá cây」と言います。[lá cây]は「木の葉」を表しますので、直訳すると「木の葉の青色」となります。しかし厳密に区別する必要がない場面では一言xanhで片づけるのが普通です。なので例えば、「赤、黒、緑」のペンがあるときにxanhと言えば緑のペンを指しますが、「赤、黒、緑、青」のペンがあるときにxanhと言うと普通は青を指します。緑のxanhはあくまで青の選択がない場合に認識されるといったところでしょうか。
なのでベトナムの青信号をベトナム語で言うときも、見た目は緑でもmàu xanhと呼びます。そういう部分は「青信号」と呼ぶ日本語と同じと言えそうですね。ではなぜ日本は緑信号と呼ばずに青信号というのでしょうか。もう少し突っ込んでみましょう。
これには諸説ありますが有力な説としてこのようなものがあります。
日本語の「緑」は元々色を表す言葉ではなく、新芽など若くてみずみずしいものを表す言葉だったとされています。なので「緑髪」と言えば「若くて艶のある黒髪」を意味しますし、今となっては意味不明な「緑(嬰)児」は「赤ちゃん」を指します。なので「緑」は他の色を表す単語と比べ後から加わった色を表す単語という歴史があり、それまでは緑は青に含まれていたそうです。「青い、黄色い」と言えるのに対し「緑い、緑色い」などと形容詞化できないところからも色を表す単語の中での特殊性が見られます。以上から青信号はその名残と言われています。考えてみれば青リンゴや青汁と言って、青色を想像する人はいないでしょうから青が示す範囲が現代にも引き継がれていますね。