ベトナム人の志望動機

「大学時代から日本語を使ってできる仕事に興味を持っていました。特に通訳と翻訳です。大学を出てからずっと日本語関係の仕事をやってきました。日本人顧客と仕事をやっていくうちに、日本文化から日本人の働き方に至るまで、色々な素晴らしい経験を身に着けました。これらの経験を貴社で生かして、戦力となり貢献したいと考え、志望しました」

 

上記はベトナム人の履歴書に書かれた志望動機ですが、どのように感じるでしょうか。少しでも採用経験などがあれば「どこかで見た内容だな」と思うかもしれません。今回はベトナム人の志望動機について紐解いてみましょう。

 

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ベトナムでよく使用されている日本語の履歴書サンプル

 

まず上の志望動機ですが、こちらは日本語の履歴書に書く志望動機のサンプルです。ベトナム語のウェブサイトでは日本語の履歴書の書き方を紹介したものや、志望動機や趣味のサンプルが記載されたサイトがたくさんあります。一部の求職者はこれらのウェブサイトを見てコピペし、そのまま提出しているようです。

しかし日本人から見れば、「この人の言語力でこの文章は書くのは無理だろう」とすぐに分かりますので、逆に印象が悪くなってしまいます。確かに外国語で志望動機を書くのは煩わしいものですが、手間をかけて自分の言葉で志望動機を書いている人のほうが読む気になります。たとえ下手くそな日本語であっても苦労して書いたであろう姿が目に浮かぶだけでも前者より印象が良いものです。

 

趣味でも同じようなことが言えます。例えばサッカー、読書、音楽、映画はベトナム人のテッパン趣味ですので、正直履歴書に記載する必要もないと感じています。趣味ですらコピペをしていると思われる履歴書に出会うことも多々ありますが、とりあえず飾り付けた履歴書といった印象でしょうか。

 

私がベトナム人の求職者と面談をする際には志望動機や希望職種について口頭で確認をするようにしています。日本語人材の場合その答え方に大きく2パターンがあります。

 

①日本語を使う仕事がしたい

仕事は何であれ日本語を使用できる環境を求めるパターン。この回答は比較的過去にこれといった職歴がない人に多いのが特徴でしょうか。一方英語人材については職歴が乏しい人でも「英語を使う仕事がしたいから」と答える人が少ないのが謎なところ。

 

②具体的な仕事内容を答える

過去にそれなりに実績を持っている人はこのパターンが多いです。この場合は日本語を使うことを前提としつつ、日本語を使って具体的に何をしたいかを明確に答えているので分かりやすいのは確かです。

 

企業側としたら①を言われると「日本語が使えたら別にうちじゃなくてもいいのか?」と感じてしまうかもしれません。当の求職者はそう答えることに違和感を感じていないので、私の立場上、それがどういう印象を与えるかを都度説明する必要が出てくるわけです。

 

例えばローカルの日本語センターで日本語教師を募集したとします。どうして日本語センターで日本語教師をやりたいのかと聞かれたとして、

「日本で実習経験があって日本語が分かるから」

と答える人もたくさんいます。教員という職業の志望動機としてこの回答は日本なら確実にアウトですが、それで採用されてしまう社会です。ベトナム企業ではとりあえず採用してダメだったら試用期間で切れば問題ないという、ある意味シビアな面がありますので、面接はあくまで本人の経歴や表面上の態度などを確認する程度にとどまります。採用にかける費用が外資系企業ほど割高でないという事情もあるのでしょう。

 

採用に対する企業側の考え方もありますので一概には言えませんが、面接で志望動機を聞くのは日本人に志望動機を聞くよりも参考になる部分が多いように感じます。

 

 

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