質問の答え方について

ベトナム人には退職理由や志望動機を聞くことに意味がないという意見もあるようで、その根底には「本当のことを言っているかどうか知る由がない」というのがあるようです。確かに面接のときには本当のことを言わずに取り繕って話すことも大いに考えられますので、参考情報にはなっても判断材料にはならないというのは分かります。しかし面接の前段階である人材紹介会社相手には本音を話すものでしょうか?今日はその部分について実例を交えて書きます。

先日あるベトナム人女性と面談した時に直近企業の退職理由を尋ねると、

 

女性:「それは言いたくありません」

 

と言われました。こう言われることは時々あって、珍しいことではありません。しかしこちらも人を紹介する立場上、退職理由不明というのは気持ちが悪いものです。私はこう続けます。

 

私:「言いたくないと言えば何か悪いことをしたと思われるかもしれませんよ。無理に話す必要はないですが、もし教えてくれれば良い答え方をアドバイスできるかもしれません。」

 

女性:「・・・。実は同じ職場の彼氏に振られたんですが、同じ職場の別の女と浮気していたんです。その女と仲良くしているのが辛くて悲しくて、もうその職場で働けないと思って。。。」

 

「言いたくない理由」の一つに色恋沙汰はよくあります。求職の相談者は若い人が中心ですのでそんなこともあるでしょう。

 

私:「そうでしたか、それは嫌な思いをしましたね。お気持ちよく分かります。話してくれてありがとうございます。その場合は「同僚との人間関係の問題」と言ってはどうですか。初めから話したくないと言うと不審がられて印象が悪くなりますから。」

 

上の女性はある意味素直な人だったので、本当に話したくないから話したくないと言ったのでしょう。私の提案に対しても素直に分かりましたと頷いていました。

 

少しシビアな話になりますが、退職理由が何であれ基本的に「退職理由を言いたくない」と答えた時点でその人の程度を窺うことができます。言いたくない退職理由であっても、機転が利くベトナム人はきちんと当たり障りのない回答をしてくるものです。こういったことができる人は「こんな言い方は相手も納得しないだろうな」とか「こう言ったら印象が良くないだろうな」ということを自分で考えることができるので、この意識は仕事上でも生きてきます。予想だにしないことを聞かれたときに本当であれ嘘であれ相手を納得させるような切り返しができる人は大したものです。特にその返答が外国語であった場合は尚更のことでしょう。面接をする際には、「こんな質問をしたらどんな返答をするだろうか?」という質問を一つぐらい持っておくことも一考です。

 

ベトナム人にも本音と建前の文化がありますが、これを上手く日本のそれに合わせて日本人と接することができる人は職場でも高評価をもらえている人が多いです。このスキルが高い人ほどカウンセリングの段階で本音を探るのに苦労をするわけですが、少なくとも日系企業でのコミュニケーションを上手くやっていくために必要なスキルの一つと言えそうです。

 

 

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