ベトナム人が仕事に求めるもの

ベトナム人の退職理由の中で「職場でのストレス」を挙げる方がいます。同じような退職理由は日本人でもありますので特に珍しく感じることはないと思いますが、ベトナム人の仕事に対する考え方として、少し面白い議論を聞くことができましたので紹介します。

・ストレスは人生で一番取り除くべきもの

友人のベトナム人が言っていた言葉です。その友人の考えでは、「仕事=ストレスに耐えるもの」という考えはおかしいというもので、仕事で溜まったストレスをプライベートで発散するという生き方は、つまり常にストレスを抱えながら生きなければならない、という主張です。彼から言わせればストレスで病気になるまでそこで働く日本人は到底理解できない、ということのようです。これは嫌なことがあったらすぐに仕事を辞めるという、「辛坊がない」ということとは全く別物と言います。

 

・この主張を聞いたある日本人の意見

日本人の場合、転職をする前にまず「仕事を辞めること」に対して勇気が必要な人もいると言っています。昨今現れた「退職代行サービス」などはその典型で、辞めることについて恐怖を感じる人もいます。この点についてはベトナム人にとって理解不能なようですが、日本人はそれほど職場での人間関係に無意識的な拘束を感じていることが窺えます。また仕事を辞めることに対し、一部の人はその会社について来れなかったと解釈する人もいるでしょう。中にはあからさまに侮蔑的な言葉を言う人もいます。こういった感覚はベトナム人からは聞かれないところです。

 

・ベトナム人にとって理想の職場とは

ベトナムは社会に存在する会社自体がまだまだ若いので、比較的同世代のみで構成される職場も珍しくありません。少しベトナム語の話になりますが、年齢層の近い間での呼称、「Anh,Chị,Em」のみで事足りる環境(つまり年の差一回り程度)です。そんな近い年齢層が集まる職場では、同世代同士で楽しくワイワイやる雰囲気が最も好まれるようで、日本で言う先輩後輩の関係が良好な部活動のような感じでしょうか。いわゆる一般的な日本企業の落ち着いた雰囲気は、彼らにとってときに堅苦しいものに映るのでしょう。

 

・仕事とプライベートは別物か、という考え

先ほどのベトナム人が少し気になることを言ってましたが、ベトナム人は日本人ほど仕事とプライベートのオン、オフの切り替えはできないとのことです。日本人は仕事ときの顔とプライベートのときの顔が違うという人が時々いますが、ベトナム人でそんな人はまずいないと言います。なので仕事をきっちりする人はプライベートでもきっちりしていますし、逆にプライベートがメチャクチャな人は仕事も例外なくメチャクチャだと言います。ここでの切替が日本人ほど器用にできないので、仕事でストレスを感じるとそのままプライベートでもずっとストレスを抱えたままになってしまう、結果的に仕事を辞める、ということにつながってくるのではないかと言っていました。

 

国や民族に関係なく人として共通の感情や感覚というものが存在します。しかしその感情や感覚に至るプロセス、その後の対処についてはそれぞれの文化が大きく影響するものです。今回はこのそれぞれの文化について改めて違いを感じさせるやり取りでした。

 

 

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